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2021/10/01

手順より、スキルより、大切にすべきこと

「おっ!全員集まりましたね、すばらしい
皆さん、お忙しい中ありがとうございます!」
 
先日、チームコーチングを始める際に、私が発し
た第一声です。
 
チームコーチングのようなチーム課題を話し合う
場というのは、メンバーにそれなりに精神的負荷
がかかります。特にチームで上手くいっていない
人にとっては、セッションは憂鬱なものでしかない
かもしれません。
 
時に、仕事を理由に欠席する人もいたりして、
全員揃うというのは当たり前のようで、なかなか
難しいものです。
 
ですので、全員が参加できた場合は、一人ひとり、
色々な気持ちを乗り越えて参加してくれたことを
称え、冒頭のような言葉を伝えております。
 
チーム開発は、とかく、その手順や具体的進め方、
さらにはスキルなどが注目されがちですが、
もう一つ大きな要素として忘れてはいけないのが、
“その場にメンバーが参加していること”
それ自体を大切にすることだと思っております。
 
そこに全員がいることで、すでにそのチームは
成長へ向けて大きく前進していると考えます。
もちろんその後の進め方によって、後退・停滞
することもあるかと思いますが、全員が対話の場
に参加している時点で、一段どころか半分近く
階段を上っているといっても言い過ぎではない
ように思います。
 
わたしたちの周りに目を向けてみると、ちょっと
したことで始まった夫婦喧嘩や兄弟喧嘩が、
大きな口論となってしばらく口をきかなくなる、
なんてことがあると思います。関係が悪化すると、
家族でさえもすぐに会話・対話が途絶え、修復に
向けて結構時間がかかってしまうようなことは、
皆さんもご経験があるのではないでしょうか。
 
また、政治や外交でも、与野党の対立によって
簡単に議会で審議拒否が行われたり、関係悪化
によって首脳会談が長期間なくなってしまうなど、
公的な世界でもすぐに対話が滞ってしまいます。
対話は、どの世界においても、そこにある椅子が
すぐに空席となってしまうデリケートなものと言え
るかもしれません。
 
ただ一方で、対話が可能となった瞬間に、その
関係性に様々な未知なる可能性が開けることも、
また事実です。長年コーチとして活躍され、現在
ダイアローグ・カフェ・クラブ代表理事の本間達哉
さんは、『1on1の対話レッスン』という著書の中で
こんなエピソードを紹介しています。
(以下、書籍の文章から要約しまとめてみました)
 
とある会社でマネジャー向けに研修を実施した
ときのこと。アイスブレークで、
「普段少し距離間を感じていると相手と二人組に
なって、言葉を交わさずただ視線を合わせる」
というワークをやったそうです。
そのときに、仲が悪く1年以上会話していない
女性管理職同士がペアとなったとのこと。
周囲が心配する中ワークを進めていくと、
お互いを見つめる二人の目から涙が溢れ出て
いたそうです。
 
もともと、その二人は、上司・部下の関係で、
とても仲が良かったのですが、部下が昇格して
上司と同格になり、ある業務トラブルをきっかけに
険悪になってしまったとのこと。
研修の後、二人に話を聴いてみたら、元部下の
女性は、このワークの間、元上司のまなざしに
“やさしさ”を感じていて、元上司は、この研修を
きっかけに関係修復したいと思っていたそうです。
 
たとえ関係が悪化していても、その場に相手が
存在し、目線を合わせて気持ちを通わせることで、
それが修復に向けた大きな力となることを学ばせ
てくれる貴重な体験談と言えます。
 
「その場に相手がいること」
これは組織開発でとても重要な要素で、昨今
各企業で導入されてきている1on1にも通じる
話だと考えます。
 
普段の業務指示とは全く違うコミュニケーションを
必要とする1on1ですので苦労されている管理職
の方も多いように思いますが、やはり大切なのは
部下が1on1に参加してくれてその場にいること
をしっかりと認知し、場面によっては感謝を伝える
ことだと思います。
 
上司からの、
「今日も時間作ってくれたね、ありがとう~」
「お~〇〇さんいつも時間通りだね~」
「忙しそうだね~、仕事大丈夫かな?」
こうした存在を大切にする言葉によって、上司と
心理的距離を感じている部下であっても、
「あ~自分に関心持ってくれているんだな」と感じ、
「いろいろと話してみようかな」と徐々に心を開い
ていくようになるのだと思います。
 
(2021.10.1 柿沼昌吾)