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2021/08/06

理念を体現する組織

(株)Human Science Plowの伊藤礼子です。
Human Finder News Letterをお読み頂き
誠にありがとうございます。
 
今回は、「理念を体現する組織」をテーマに
取り上げたいと思います。
 
リモートワークが主流になってきた今、経営と
社員個人がどのような形で“結ばれるのか”?
または、働いている人たちの組織へのエンゲー
ジメントをどのように高めていくか?といった課題
が注目されています。
 
今回は、その中で重要な役割を果たすであろう
「経営理念」について考えてみたいと思います。
 
話に入る前に、いま、私達は今どのような時代、
社会の潮流にいるか確認していきましょう。
 
Ⅰ)複雑系の時代
 
複雑系(complex system)という言葉を聞かれた
ことがある方も多いのではと思います。
複雑系とは、人間の脳や社会全体のように数多く
の要素で構成され、それぞれの要素が複雑に絡
み合ったシステム。このシステムを的確に捉えて
いくための新しい知のパラダイム(※)です。
※)一時代の支配的な物の見方
 
■ パラダイムシフト
~機械論から生命論へ~
 
では、複雑系、つまり新しい知のパラダイムとは
具体的にどのようなものでしょうか。
 
近代から20世紀までの人類の繁栄は、「機械論
パラダイム」によって牽引されてきました。
「機械論パラダイム」とは、世界や物事を認識す
るときに、それを機械と捉え、細かい部分に分解
して詳細に分析し、再び集めて総合することで
全体を理解するという考え方です。
 
しかし、社会は成熟し、このようなアプローチで
は、環境問題などの地球規模の複雑な問題には
対処できなくなってきています。
 
21世紀、社会の潮流はこの「機械論パラダイム」
から「生命論パラダイム」へシフトしてきています。
「生命論パラダイム」とは、物事を捉える時、一つ
の“大いなる生命体”として捉えていくものです。
 
複雑系は、この「生命論パラダイム」の世界観を
ベースとしており、機械論のように要素に分解し
ていくのではなく、全体を構成している要素のつ
ながりやプロセスを洞察するという考え方です。
 
この、「生命論パラダイム」、世界を「大いなる生
命体」と見る「生命的世界観」への転換が、
経済、地球環境、宇宙科学等、様々な領域で
起こっています。そして、経営の領域もこの考え
方が取り入られ始めております。
 
Ⅱ)理念を体現する組織
 
工学博士で思想家の田坂広志氏は、複雑系の
特質の一つとして自己組織化(self-organization)
というものを挙げております。
 
経営の文脈では、誰かが組織の構成を設計、制
御するのではなく、組織は「自然に秩序や構造を
形成する」という意味になります。
 
■ 「理念」に生命を通わせる
 
では、この自己組織化という特質を持った企業。
この生命体の生命力と統一性(秩序)は、どのよう
に保持していけるでしょうか?
 
そのためには、組織の「存在目的」と「あり方」を
言語化した「企業理念(corporate philosophy)」を
明確に掲げ、共有し、働く人々(複雑系の最たる
存在)の「こころ」の充足を図ってゆくことがとても
重要になってくると思われます。
 
そして、「理念」は、通常「抽象的」な「言語」
によって表現されています。「機械論パラダイム」
においては、ものごとは言語化することで伝わる
と思い込んできましたが、「生命論パラダイム」に
おいては、むしろ最も伝えたいことは「非言語」に
よって腹落ちし共有できると認識されています。
 
つまり、「機械論パラダイム」では、経営理念は
浸透させていくことは難しく、絵にかいた餅になっ
てしまう可能性が高いと言えるかもしれません。
 
「非言語」とは、五感によって知覚される身体知
(somatic intelligence)や第六感をはじめとし、
深層意識や集合意識・集合的無意識に及びま
す。馴染みのある言葉で言えば、暗黙知という
言葉で表現できるものです。
 
コロナ禍前であれば組織内の暗黙知も伝わり
易かったかもしれませんが、オンラインでの
テキストコミュニケーションが常態化する今では、
経営理念や方向性の共有・浸透は勿論のこと、
一人一人のメンバーがそれを腹落ちさせていく
ことはとても難しくなってきているように思います。
 
そういったことが現実の課題になる中で、
少ない機会を使って上司や同僚そしてなにより
自分自身とのコミュニエーションの質を高め、
深層的対話を重ねていくことがとても重要に
なってきます。
 
対話の中で、組織の掲げる「普遍的な理念」を
「具体的」なエピソードをもって共有されたり、
その組織らしい唯一無二の「個性的」な物語が
広がっていくことは、あたかも組織内に血液が
循環し始め生命体に力を漲らせていくような
感じかもしれません。
 
ここまでくれば、正に“理念を体現している”と
言えるのではないでしょうか。
 
そして、田坂氏は、複雑系の特質として、
創発(emergence)というものも挙げております。
それは、組織のように複雑化するものは、その中
で新しい性質を獲得するというものです。
さらに加えると、これは通常の組織が求めている
連続的な進化ではなく、不連続な進化です。
 
わたしたちも、何かスキルを習得するときに、
努力してもなかなか伸びない時期があり、
突然上達するようなことがあると思います。
組織も、そのような不連続な進化の形態をとると
いうことです。
 
中期経営計画などで、売上利益の目標を作り
トップダウンで企業を連続的に進化させていく
アプローチは、実は、組織に馴染まず、
前述の自己組織化といった特質を大切にし、
それを信じて経営していくことで予測できない
タイミングで大きな発展に繋がると思われます。
 
今後、社会は大きく変わり、経営の課題も益々複
雑化すると思われます。そういった中で、
わたしたち一人ひとりが、複雑系を意識しながら
組織運営に携わり、横の繋がり大切にしたり、
メンバーとの深層対話から企業理念の物語を紡
ぐなどしていくことが重要となるでしょう。
それによって環境変化と歩調を合わせて進化す
る理想の組織に近づいていくと考えております。