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2021/10/29

「1on1」の現在地

人事の世界は、毎年のように新しいテーマや
施策が紹介されます。それらは、そのまま定着
するものもあれば、いつの間にか消えてしまう
ものも多くあります。
 
最近、よく耳にするものとして、1on1ミーティング
(以下1on1)があるかと思います。1on1とは、上司
と部下で定期的に行われる“部下のために”の
ミーティングで、原則、テーマは部下が決め、
上司が聞き役となり進められるものです。
 
この1on1。
実際、どれくらいの企業に受け入れられ、どの
ように活用されているのでしょうか。
 
今回、それを確認するため、日経電子版(※)の
キーワード検索を使い“1on1”について掲載して
いる記事を抽出、分析してみました。
※)日経の各媒体がwebで閲覧できるサービス
 
最初に1on1が登場したのは、2017年3月29日
WOMAN SMARTという電子媒体の記事の中で、
ヤフーの導入事例が紹介されました。
それを皮切りに現在に至るまで度々取り上げられ、
年毎の掲載件数は下記の通りとなっています。
 
2017年  2件
2018年  7件
2019年 11件
2020年  8件
2021年 20件
 
2021年は2か月を残しているにも関らず、前年の
倍以上となり注目度が増しているのが分かります。
私たちも様々なテーマでセミナーを開催して
おりますが、実は、1on1の反応が一番多く、
その関心の高さを感じています。
 
さて、2017年から合計すると48件の記事が
あったわけですが、それらの記事内容を分析
すると、幾つかのカテゴリーに分けることができ
ました。今回、代表的な4つのカテゴリーを紹介し
たいと思います。
 
① 上司・部下のコミュニケーション活性化
2017年の記事の多くは、グーグル・ヤフーなど、
限られた外資の取り組み紹介が中心でした。
2019年頃から日本企業の事例や1on1を題材に
したコラムが紹介されるようになり、2021年には、
コロナ禍によってリモートワークを導入する企業
が増え、上司・部下のコミュニケーション不足を
解消するための有効手段として1on1がさらに
関心を集めます。2021年に件数が多くなった
のは、そのことが大きな理由と言えるでしょう。
 
2021年3月4日『日経コンピュータ』に掲載された
【テレワークで対話不足 切り札は「1on1」】
というタイトルの記事に、こんな一文がありました。
 
「在宅勤務の長期化でコミュニケーション不足
という課題が見えてきた。新しい働き方を確立
しようとする先進企業は、この解決に乗り出し
ている。上司と部下の個人面談「1on1(ワン・
オン・ワン)」を切り札に、非対面で対話する
機会の創出に動いている」
 
② 人事評価制度の納得性向上
人事制度の評価面談は、一般的に、期初の目標
設定と期末の評価の計二回で終わってしまう
ケースが多いように思います。そのため、社員に
とっては、適正に評価されているか不透明で、
納得が得られていない場合もあるでしょう。
それを解消するために1on1を使って上司・部下
の接点を増やし、目標の進捗状況をリアルタイム
に共有している企業が増えてきているようです。
下はGMOペパボ社についての記事の一部です。
 
【入社即在宅」でも人は育つ やりとり密に、評価
工夫を】『日経新聞』 2020年8月31日
 
「期初に上司と部下で目標を設定したうえで、
毎月1回、オンライン個別面談「1-on-1」で改
善点を確認するのがキモだ。実態が当初目標
と乖離(かいり)しても随時修正できる。」
 
この記事の他、環境変化のスピードに合わせて
目標自体を1on1のときに柔軟に変更したり、
実施したことを一緒に振り返って、経験学習を
促進し、成長を支援している事例もありました。
 
③ 社員のキャリア・働き方改革支援
社員側に立った取り組み紹介も多く見られます。
1on1で家族の状況を話し、家族が病気のときに
仕事を休めるよう協力を得やすくしたり、自分の
キャリアビジョンについて上司の意見を求める
など、“緊急ではないけれど重要なテーマ”を
話す場として活用している例も多くあります。
下は損保ジャパンの取り組みを取り上げた記事
の一部です。(文中の中野というのは、損保ジャ
パンの課長職の方のお名前)
 
【「名もなき家事」知った 在宅勤務で男性が
役割分担パパたちの静かな革命】『日経新聞』 
2021年7月20日
 
「同社が昨年から始めた「1on1ミーティング」で
は上司が部下の望む働き方やキャリアの価値観に
まで踏み込む。「家族を優先して働きたい」
「子育て中でも難しい仕事に挑戦したい」。
中野は「家庭での役割も知ることで、業務上の指示
も出しやすい」と効果を話す。」
 
④ 1on1実施のための環境整備
人事の施策は、潮流に乗って形だけ導入しても
上手くいかないものです。1on1も同様で、外形
だけでなく、管理職のスキル開発、1on1を助ける
サーベイやIT技術の活用、そして、専用の実施場所
を設けるなど、会社の実態に合わせて様々な工夫を
する必要があります。
IT企業のPhoneAppli社のこんな取り組みが紹介され
ておりました。
 
【上司と部下・社員同士 対話を促すオフィスと
は】『日経新聞』 2020年2月14日
 
「本社にあるガラス張りのボックス。上司と部下が
面談する「1on1」専用のブースだ。備え付けられた
センサーが、それぞれのしゃべった時間や部下の発
言のテンポを測り、きちんとコーチングできている
かを分析する。」
 
このカテゴリーの記事は、最近になって増え始め、
会社独自に1on1を進化させているようです。
 
以上、四つカテゴリーについて解説いたしました。
改めて記事を見て思うのは、今後、人材確保が
難しくなる中、社員重視の経営が求められ1on1
の導入は益々加速するように思います。実際、
転職者向けの記事(※)では、企業を見分ける
観点として1on1導入の有無を挙げていました。
※)2019年3月15日 出世ナビ【社員を壊す会社・
生かす会社 転職で泣かない見極め方】
 
リモートワークの常態化も相まって、新たなコミュ
ニケーションスタイルが必要となってきている今、
1on1は人事施策の中核となる可能性があります。
そして、企業で導入し定着させる場合は、単に
書籍や他社を真似て取り入れるのではなく、
自社が持つ風土や課題を把握し、オリジナリティ
のある1on1システムを作り込んでいくことが大切
になってくるように思います。
 
(2021.10.28 柿沼昌吾)